
この記事の要約
この記事では「60歳以上で喫煙習慣のある方の腰や背中の痛みで、最も怖い病気」について解説しています。
結論は「お腹の太い血管(腹部大動脈)のふくらみや裂けです」。
突然の激しい痛み、場所が移動する痛み、脈や血圧の左右差があれば、整骨院ではなく救急外来です。
結論
60歳以上で、たばこを吸う習慣のある男性の腰や背中の痛みで、いちばん怖いのは腹部大動脈瘤(ふくぶだいどうみゃくりゅう)とその破裂、そして大動脈解離(だいどうみゃくかいり)です。
お腹の中を通る太い血管がふくらんだり、血管の壁が裂けたりする病気です。
破裂すれば命に関わります。
「突然の激しい痛み」「痛む場所が肩甲骨から背中、腰へと移る」「脈や血圧に左右差がある」「気が遠くなる」。
このような症状があれば、整骨院ではなく救急外来を受診してください。
この文章を書いた人

坂爪 慶(さかつめ けい)
取得資格:柔道整復師/はり師/きゅう師(国家資格)
新潟県新潟市のさかつめ整骨院鍼灸院院長
新潟市秋葉区生まれ(旧新津市)
1997年から施術に携わり、整形外科での勤務を経て、2017年12月にさかつめ整骨院鍼灸院を開業しました。
痛いところだけを見るのではなく、立ち方や座り方、体の傾きまで含めて原因を一緒に探すことを大切にして施術を行っています。
お腹の血管なのに、なぜ腰や背中が痛むのか
ここが分かりにくいところだと思います。
お腹の血管の病気なのに、痛むのは腰や背中。
結びつかないのが普通です。
この太い血管は、背骨のすぐ前を通っています。
みぞおちの奥から、おへその少し下まで。
背骨と向かい合わせに、ホースのように縦に走っています。
ですから異変が起きたときに痛むのは、お腹の表面ではありません。
背中側、つまり腰や背中の奥です。
「お腹の病気なのに腰が痛い」のではなく、もともと腰のすぐ内側にある血管の話なのです。
では、なぜふくらむのか。
血管は、心臓が打つたびに内側から押されています。一日におよそ10万回。
長年の喫煙や高血圧で壁がもろくなると、その力に負けて、弱いところが風船のようにふくらみます。
ふくらむほど壁は薄くなり、薄くなるほどふくらみやすくなります。
痛みのないまま、少しずつ進みます。
なぜ整骨院で気づきにくいのか

腹部大動脈瘤は、腰痛のうち見逃してはいけない5つの病気の1つです。
その中でも、神経の強い圧迫(馬尾症候群)と並んで「即救急」に分類される最も急ぐ病気です。
ところが、この病気は整骨院で気づくのがとても難しいのです。
理由の1つ目は、お腹を触っても分からないことです。
お腹の脂肪が多い方では血管に触れることができず、痩せている方では正常な血管でも触れてしまいます。
講座で総合診療の先生に伺ったところ、「触診だけで区別するのは難しい」というのが実情でした。
理由の2つ目は、大量に出血する前の段階では意識がはっきりしていて、歩いて来院できてしまうことです。
「ただの腰痛」の顔をして来られるため、腰痛に紛れ込んでしまうのです。
危険なサインは「突然」「移動する」「左右差」

それでも、手がかりはあります。
1つ目は、突然の激しい痛みです。
血管の壁が裂けた瞬間の痛みなので、「いつ始まったか」がはっきりしています。
ぎっくり腰と紛らわしいのですが、痛みの程度には幅があり、最初は軽い痛みで受診したあと急激に悪化した方もいると聞いています。
2つ目は、痛む場所が移動することです。
壁が裂けると、裂け目は血の流れに押されて、血管に沿って縦に広がっていきます。
血管は胸から腰へ走っていますから、裂け目が進んだぶんだけ、痛む場所も胸から背中、腰へと下りていきます。
ぎっくり腰は、最初に痛んだ場所がそのまま痛み続けます。
痛みが動くかどうか。ここが見分けの手がかりです。
3つ目は、痛み以外の症状です。
血圧や脈の左右差、腕の脈が触れにくい、気が遠くなる、両足の力が急に入らなくなる。
なぜ左右で差が出るのか。
この太い血管からは、両腕と両足へ枝が分かれています。
裂け目がその枝の入口にかかると、先へ流れる血が減ります。
だから片側だけ脈が触れにくい、血圧が違う、ということが起こります。
左右で差があること自体が、血管の病気を示す合図です。
こんな覚えはありませんか。
「あっ」と声が出るような痛みが、何をしていたか言えるくらいはっきり始まった。
最初は肩甲骨のあたりだったのに、しばらくして腰のほうへ下りてきた。
冷や汗が出て、一瞬目の前が暗くなった。
横になっても、姿勢を変えても、痛みが引かない。
そして背景として、60歳以上・喫煙習慣。
この背景がある方の腰背部痛は、当院でも最初にこの病気を疑うようにしています。
迷ったら救急外来です

この病気は、整形外科で数日待つ病気ではありません。
紹介状を書いている時間も惜しいため、当院では疑った時点で救急外来をおすすめします。
講座で伺った実務上の結論は、「安全を取るなら、急な痛みの時点で一度画像検査を受ける」というものでした。
痛み以外の症状があるときも同じです。
「急な激しい腰の痛み」で、上に挙げたサインが1つでも重なるなら、迷わず救急外来へ行ってください。
当院でのアプローチ
当院では、初めていらした方に持病や喫煙歴などの背景を毎回お聞きしています。
60歳以上で喫煙習慣のある方が「突然の腰や背中の痛み」で来られたときは、痛みの始まり方と移動の有無、気が遠くなる感じや足の症状がないかを確認したうえで、施術の可否を判断しています。
疑わしい場合は施術を行わず、救急外来の受診をおすすめします。
血管の病気は、施術で良くなることはなく、時間との勝負だからです。
まとめ
60歳以上でたばこを吸う方の腰や背中の痛みで、いちばん怖いのは腹部大動脈瘤と大動脈解離です。
突然の激しい痛み、移動する痛み、脈や血圧の左右差、気が遠くなる感じがあれば、整骨院ではなく救急外来を受診してください。
症状によっては医師の診察が必要な場合があります。
腰痛で病院を受診すべき目安は、こちらの記事でも解説しています。
整骨院では施術できない腰痛がある?当院が病院をおすすめするとき
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【柔道整復師・はり師・きゅう師 坂爪 慶監修】
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