【症例ケーススタディ第1回】病院で「足関節固定術」を勧められた患者さん。その手術、本当に必要ですか?

この記事の概要

病院で「足関節固定術」を勧められた40代後半・保育士の女性の症例をもとに、治療家として患者さんにどうアドバイスすべきかを考えるシリーズ第1回です。整形外科医が固定術を選ぶ思考の背景、保育士という職業への術後の影響、骨棘による疼痛の機序、そして保存療法でできる具体的アプローチ(サポーター活用・炎症コントロール)までを整理しました。局所だけでなく患者さんの生活背景まで診る視点を、現場で使える形で記載しています。

はじめに

こんにちは。

さかつめ整骨院鍼灸院の坂爪 慶です。


現場の先生から寄せられた実際の相談をもとに、整形外科的な視点と保存療法のアプローチの違いについて深掘りしていくシリーズの第1回をお届けします。

患者さんが病院で「手術しかない」と言われたとき、私たち治療家はどのようにアドバイスすべきでしょうか?
実際の症例から一緒に考えていきましょう。

 

 

今回の症例40代後半·保育士の女性

まずは今回の患者さんの状態です。

年齢·職業 4647歳の女性、保育士

既往歴: 高校時代にハンドボールで足首の捻挫を繰り返し、放置していた

現状 右足首の軟骨が完全にすり減り、重度の変形を起こしている状態。
歩行などの日常生活に支障はなく、可動域制限もそこまで強くないが、患部に何かが当たると激痛が走る。

病院での提案 整形外科を受診したところ、「スクリューを入れて足首を固定する手術(足関節固定術)をしましょう。手術をすれば痛みはなくなり、普通の生活はできますよ」と勧められた。

 

「足関節固定術」のリスクと、保育士という職業への影響

患者さんは医師の言葉を聞いて「痛みがなくなるなら手術しようかな」と考えていたそうですが、ここで立ち止まって考える必要があります。

足関節固定術とは、足首を90度(中間位)で完全に固定してしまう手術です。
つまり、術後は足首を反らしたり(背屈)、伸ばしたり(底屈)することができなくなります。

この患者さんの職業は保育士です。
仕事中、しゃがんだり、正座をしたり、子どもと一緒に小走りしたりする動作が頻繁にあるはずです。
足首が固定されて背屈ができなくなると、こうした動作が極めて困難になり、仕事に大きな支障をきたすリスクがあります。

 

なぜ医師は「手術」を勧めたのか? ── 整形外科医の視点

「仕事に支障が出るのに、なぜ医師は手術を勧めたのか?」と疑問に思うかもしれません。

一般的な整形外科医、特に手術を専門とする医師は、「これ以上変形を進行させないこと」や「局所の痛みをなくすこと」にフォーカスする傾向があります。
患者さんの職業や術後の生活の質(QOL)まで十分に考慮されていないケースも少なくありません。

極端な話、「手術して痛みが取れれば成功。今の仕事に支障が出るなら仕事を変えればいい」という思考に至る医師もいるのが現実です。

また、足首の動きが失われることで膝や腰など他の部位にどう負担がかかるか、という「全身の繋がり」まで考慮して治療計画を立てる一般整形外科医はあまり多くありません。

 

「当たると激痛が走る」理由と、保存療法でのアプローチ

では、私たち治療家としてこの患者さんにどう対応すべきでしょうか。

歩行などの日常生活で常に痛みがあるわけではないのなら、無理に手術を急ぐ必要はないと考えられます。

そもそも、なぜ患部に当たると激痛が走るのでしょうか。

軟骨がすり減って変形が進むと、「骨棘(こつきょく)」という骨の出っ張りが形成されます。
この骨の出っ張りが、内側から関節包や皮膚を押し上げている状態になります。
そこに外から物理的な刺激(何かが当たるなど)が加わることで、神経が過敏になり激痛が走るのです。

 

明日からできるアドバイスとケア

現状を維持しながら痛みをコントロールするためのアプローチとして、以下のような方法が有効です。

物理的刺激から守るサポーターの活用

テーピングなどでガチガチに固定するのではなく、「ザムスト」などのウェットスーツ素材でクッション性のある市販のサポーターをおすすめします。
これにより、外部からの衝撃を和らげ、直接的な痛みを防ぐことが期待できます。

ただし、締め付けすぎると血行不良を起こして痛みが悪化する可能性があるため、適度な圧迫にとどめましょう。

炎症のコントロール

サポーターで患部を保護しながら、治療院で炎症を抑える治療を行い、痛みをコントロールしながら急激な変形の進行を防ぎます。

 

まとめ

医師の「痛みがなくなる」という言葉の裏には、「足首が一生動かなくなる」という大きな代償が隠れている場合があります。

患者さんは「痛みがなくなる」という部分だけを聞いて安心してしまいがちですが、その先にある日常生活への影響まで想像できていないケースがほとんどです。

だからこそ、私たち治療家が「その手術を受けたら、今の仕事や生活がどう変わるのか」を患者さんと一緒に整理してあげる必要があります。
医師の判断を頭ごなしに否定するのではなく、「医師はこういう医学的根拠でこの手術を勧めている」という背景を理解した上で、保存療法でできることを丁寧に提示していく。
この姿勢が、患者さんからの信頼に繋がります。

私たち治療家は、局所の症状だけでなく、患者さんの「仕事」「生活背景」を含めた全体を診て、本当にその人にとってベストな選択肢は何かを一緒に考え、アドバイスしていくことが大切です。

動画でも解説しています。

そちらも是非ご覧ください。

 

 

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