
【症例解説シリーズ第2回】整形外科のドクターはなぜ「痛がる患者に筋トレ」をさせたのか? ── 施術家が担うべき役割とは
はじめに
こんにちは。
今回は、現場の先生から寄せられた実際の相談をもとに、整形外科的な視点と保存療法のアプローチの違いについて深掘りしていくシリーズの第2回をお届けします。
56歳、女性 ヘルニア患者さんのケース。
今回はこの同じ症例を「整形外科のドクターやPT(理学療法士)は、なぜ痛がる患者に筋トレをさせたのか?」そして「我々施術家はどうアプローチすべきだったのか?」という視点で紐解いていきましょう。
目次
症例のおさらい

患者さんは56歳で、3年前に脳幹梗塞の既往があります。
犬の散歩中に転倒して腰を強く打ち、左足全体に強い痛みとしびれが出現しました。
病院で「椎間板ヘルニアによる神経圧迫」と診断されましたが、脳梗塞の既往から手術はリスクが高いため、運動療法(リハビリ)による保存療法を行うことになりました。
しかし、病院で理学療法士(PT)の指導のもと、足に重りを乗せるような筋力トレーニングをひたすらやらされ、痛みを訴えても「大丈夫です」と続けさせられた結果、症状はさらに悪化してしまいました。
ついには膝も伸ばせず杖をつく状態になり、「これ以上の改善は難しい」とさじを投げられてしまったのです。
整形外科的視点:なぜ「痛がる患者に筋トレ」だったのか?

病院で行われたリハビリは、決して素人が適当にやったわけではありません。
ドクターやPTは、受診段階でMMT(徒手筋力テスト)などを用いて筋力低下を評価したのだと推測されます。
実は、ヘルニアの保存療法として「痛み止めを飲みつつ、筋力トレーニング(運動療法)を行う」というのは、整形外科的にはセオリー通りのアプローチです。
ドクターとしては「筋力が落ちているから鍛えれば良くなるはずだ」という医学的判断のもと、間違った指示を出したつもりは全くなかったのだと考えられます。
アプローチのすれ違いと「メンタル」という見立て

では、なぜ症状が悪化してしまったのでしょうか。
最大の理由は、患者さんの「痛いからどうにかしてほしい」というニーズと、治療側の「筋力をつけさせたい」という目的が完全に乖離してしまったことにあります。
痛みを訴えているのに患者の言葉に耳を傾けず、同じ指示を与え続けたことで、患者さんの中に強い不信感が募り、それが不安とともに痛みをさらに増強させてしまったのです。
また、病院側から最終的に「これ以上の改善は難しい」と手放された背景には、「医学的に正しい治療をしているのに良くならないのは、患者のメンタルの問題だ」と判断された可能性が高いと考えられます。
交通事故のむち打ちなどでもよく見られますが、長引く痛みに対して器質的な問題以外の要素(心因性など)が絡んでいると判断されると、病院側は深く立ち入るのを避ける傾向があります。
施術家のアプローチ:私たちができる「低侵襲」という選択

この患者さんがご縁あって相談者の先生の院に来られた際、選択されたのは徹底してソフトな刺激(微弱なアプローチ)でした。
結果として、それだけで足の感覚が戻り、歩き方も目に見えて改善したのです。
脳幹梗塞の既往があり、痛みが非常に強い状態の患者さんに対しては、いきなり負荷をかけるのではなく、まずは徹底的に「低侵襲(負担の少ない)」な方法で様子を見ることが重要です。
ソフトな施術で少しでも変化を実感してもらい、「ここは痛いことをしない」「話を聞いてくれる」という信頼感を築くこと。
これが、我々施術家が行うべき保存療法のファーストステップです。
まとめ:整形外科がカバーしきれない領域を担う

整形外科でのアプローチは医学的に正しくても、患者さんの現在の体の状態や心の状態にマッチしないことがあります。
しかし、そこで手放されてしまった患者さんこそ、我々施術家がしっかりと評価し、負担をかけすぎない丁寧なアプローチで改善に導くことができる機会でもあります。
今回のようなケースに出会った際は、「病院は間違っている」と単純に否定するのではなく、「病院はこういう医学的意図でアプローチしたのだろう」と背景を理解することが大切です。
その上で、私たちならではの「欲張らない、患者さんの心に寄り添う治療」を提供していきたいですね。
動画でも解説しております。
是非ご覧ください。


